6852人が本棚に入れています
本棚に追加
「そういえば今日さ、夢を見たんだよ」
帰り道、唐突に恋夜が語りだした。
「僕たちはその世界で沢山のことをしてさ、最終的には戦争まで止めたんだ」
僕たち……?
「恋夜も見たのか?」
「霧斗も?」
もしかしたら、あの世界の出来事は夢なんかじゃなかったのかもしれない。だが、今となってはそれを知る術はない。
「んでも、恋夜は主人公体質だし、異世界に飛ばされたりしても驚かないわ」
「またそんなこと言う……。いつだって人生の主人公は自分なんだから、そんなこと言わない!」
「いや、事実だし。ほら、言ったそばから恋夜の足元に魔法陣……が……。じゃあな、恋夜っ!」
「逃がすかぁっ!」
一瞬の出来事だった。
足元の魔法陣に気付いた俺は、恋夜に向かってにこやかに手を振るとダッシュで距離を取った。……否、取ったはずだったんだ。
だが、恋夜は俺を逃がすまいと手を伸ばし、俺の手をがっちりと掴んだ。
「いやいや、おかしいでしょ!? なんで俺を巻き込むの!?」
「え? だってこういうの好きでしょ? 確かこういうのって、勇者召喚とか、使い魔召喚とか言うんだよね?」
「確かに好きだけど! 自分が体験するのは嫌だああぁぁぁ……」
こうして、為す術もなく俺の意識はブラックアウトしたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!