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彼女は街を走りながら、彼が追いかけてくることを望んでいた。 追いかけてきて、後ろから抱きしめてきて、ごめんねと、ただ一言呟いてくれれば、それで満足だった。 でも彼はいつも期待を裏切ってくる。 追いかけては来るものの、抱きしめたりとか、そんなカッコイイことができるような男の子ではなかった。 亮太郎は春子が思い描く王子様には、なってはくれなかった。 「ひくっ……ひくっ……」 地面に座り込んでどれくらいたったのか、涙はもう枯れかけてしまっている。 彼女はチラリと腕時計を見ると、あれから30分も経っていた。
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