3人が本棚に入れています
本棚に追加
彼女は街を走りながら、彼が追いかけてくることを望んでいた。
追いかけてきて、後ろから抱きしめてきて、ごめんねと、ただ一言呟いてくれれば、それで満足だった。
でも彼はいつも期待を裏切ってくる。
追いかけては来るものの、抱きしめたりとか、そんなカッコイイことができるような男の子ではなかった。
亮太郎は春子が思い描く王子様には、なってはくれなかった。
「ひくっ……ひくっ……」
地面に座り込んでどれくらいたったのか、涙はもう枯れかけてしまっている。
彼女はチラリと腕時計を見ると、あれから30分も経っていた。
最初のコメントを投稿しよう!