1 屋上のウソツキさん

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あれ? どこかで……。 「あんた、ここの住人?」   男はまっすぐ前を向きながら言ったけれど、私は凝視していたのがバレたと思って、咄嗟に視線を逸らし、 「い、いえ」 と答えた。 「なんでこんな場所知ってんの? それにこの屋上が開放されてるってことも」 「知り合いが住んでて」   知り合いというか、大学生の兄だ。 自宅から徒歩五分ほどだというのに、お兄ちゃんがバイトをしてちゃんと家賃を払っていくからと、大学進学時に引っ越したこのマンション。   ひとり暮らしって、そんなに魅力的なんだろうか、と思ったことを覚えている。 まあ、母子家庭だしアパート自体せまいから、そのほうがよかったのだけれど。   この屋上への行き方も開放されているということも、その引っ越し後初めてお兄ちゃんの部屋に寄った時に教えてもらった。 もう三年以上前のことだ。
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