4 効かないチョコレート

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――バンッ!   むき出しのお腹を殴られた勢いで、壁に頭をぶつける音。 低くうめいた後、こらえきれず火が付いたかのように泣きわめく甲高い声。 この声は私だ。 小学生のお兄ちゃんが止めに入ってくれたけれど、一瞬で振り払われて同じようにタンスに頭をぶつける。 泣きすぎて視界がボロボロになっている中、大人の男の大きな手が私のシャツをたくし上げ、もう片方の手が再度振り上げられた。 顔はわからない。 わかるのは、その手に対するとてつもない恐怖。あの手の大きさと熱が怖い。 怖くてたまらない。 ……怖いっ! 『もう大丈夫だからね。お父さんはここにはいないよ』   パッと場面が変わる。 さっきとは一変した、穏やかな空気。部屋も変わった。 今のアパートの部屋だ。   気付けば、お母さんが私の頭を優しく撫でてくれていた。 疲れた顔にも見えたけれど、安堵に満ちたその顔。 そしてお母さんは、『ごめんね、今までごめんね』と嗚咽をこらえながら私を抱きしめてくれた。
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