1 屋上のウソツキさん

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1 屋上のウソツキさん

「ね。そこ、俺の特等席」 「うわっ!」   目を開けると、大空をバックに男が覗きこんでいた。 思わず大声をあげて飛び起きる。 「死んでんのかと思った」   ベンチの端に寄って固まっていると、その反対の端にズシッと重心が移る。 男はそのまま足を組み、頬杖をつきながらこちらを見た。   ハタチ前後だろうか、歳は明らかに上に見える。 ベンチは三、四人が座れるほどの長さだけど、それでも私は近さを感じて、体をもっと端へと詰めた。 「なんで女子高生がこんなとこいるの? 自殺志願者?」   制服のままだから女子高生とわかったのだろう。 男はもの珍しそうな顔で私を見て言った。 なにやらひと粒、お菓子のようなものを口に入れてモグモグしながら。 「……いえ」   “こんなとこ”と言われるここは、五階建てマンションの屋上だ。
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