3 落とした傘、借りた傘

1/37
79388人が本棚に入れています
本棚に追加
/233ページ

3 落とした傘、借りた傘

今日は雨だから、チョコをもらいにいけないや。 きっと、ウソツキさんもいないだろうし。   十月下旬。 靴を履き替え、校舎の昇降口で折りたたみ傘を開きながら思う。 最近毎日のようにマンションに通っていたから、まっすぐ家に帰るのがなんとなくもったいないような気がする。 「種田さんて、帰宅部だっけ?」   傘を広げた私の横に、ひょいっともうひとつ紺の傘、そして男の子が出てきた。 「大橋くん」   急な登場にちょっとびっくりしたけれど、大橋くんだとわかり、ホッとする。 「うん、帰宅部だよ」 「ちょうどよかった。一緒に帰ろうと思って追いかけてきたんだ」   なんでそんなにさわやかに、はずかしげもなく言えるのだろう、大橋くんは。 私は内心動揺しながらも、 「え? だって部活は?」 と尋ねる。 大橋くんは、たしかサッカー部のはずだ。
/233ページ

最初のコメントを投稿しよう!