Number 1

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先生が黒板に向き合い、授業を始める。 先生という立場上これは許されるのだろうか、と大悟は思う。 しかし、この光景は日常茶飯事なので今更といった感じである。 「おい、お前だけ出てたらどうだ?」 「そういうあんたが出ていけば?クラスの皆もその方が喜ぶわよ!?」 (本当はそうは思ってないくせに…) 「お前ら、とりあえず黙ると言うことを知ってくれ…」 呆れるように大悟が言い、ふと教室の中から視線を感じる。 教室の真ん中辺りに座っている侑磨の双子の姉、侑撫と目が合う。 (ん、侑撫さんか。どうしたんだろう) 「……」 侑撫も大悟の視線に気づいたのだろうか、大悟に向かって軽く頭を下げる。 「…ども」 それを返すように大悟も頭を下げる。 (双子なのにどうしてここまで違いが出てしまうのだろうか…?) 侑撫が醸し出している雰囲気は明らかに侑磨とは何かが違う。 上品、というべきなのだろうか。 それよりも…寂しい、といった感じなのだろうか。 大悟にはそのあたりを上手く言葉にすることができない。 侑磨はどんな風に思っているのだろうか? (双子なわけだし、きっと分かってるんだろうなぁ) そして何気なく後ろで言い合いをしている侑磨を見る。 (全く…。侑磨も侑撫さんを見習って静かになればもっと人気出ると思うんだけどな)
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