Number 1

12/34
前へ
/143ページ
次へ
「いや、その、えっと…」 大悟が大きく息を吐いている頃、侑磨も同じように息を吐きたくなるような状況に遭遇していた。 (いつも何なんだよ、俺が近づいただけでキャーキャーと…。耳が痛くなるほど高い声だすなよな…) 侑磨は嫌なことがあるとすぐ顔に出てしまう。 「きゃー、もう可愛い!何なの、この2年C組のマスコットキャラ!」 「侑磨君、ほら、これあげるよ!」 だが、この女子たちは侑磨の心境をこれっぽっちも読み取ろうとはしない。 侑磨の事など気にもせず、お構いなしに自分たちの楽しみとしている。 その事に、侑磨はうんざりしていた。 (マスコットキャラって何だよ…!!?それに弁当のおかずで餌付けでもしようってか!?) どうしようかと迷っていると、ご飯を食べていた侑撫が立ちあがる。 「侑磨、どうしたの?」 いつもと変わらない調子で話しかけてくる侑撫。 優しさは感じるのだが、どこか冷たい。 しかし、今の侑磨にはそれでもありがたい。 (た、助かったぁ…) 侑磨がほっと小さく息を吐く。 「こ、これ」 そう言って熊のキーホルダーが付いたカギを侑撫に差し出す。 ちゆが言うには流行っているらしい熊がぶらぶらと揺れている。 「役に立ったでしょ?」 そう言ってにっこりと笑う侑撫。 その笑顔が皮肉混じりなのは恐らく侑磨にしか分からないだろう。 「うん、そう…だな」 差し出された小さな掌の上に、侑磨がカギを本来の持ち主の元へと返す。 「ゆ、侑撫」
/143ページ

最初のコメントを投稿しよう!

156人が本棚に入れています
本棚に追加