Number 1

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「ん?」 カギを受け取ったままのポーズで侑撫が微笑む。 (…まずい。思わず名前を呼んでしまったけど、何を言えばいいんだ?) 「えっと…その、いつもありがとう…な?」 「…え?」 視線を四方八方へと移動させる侑磨を、驚いた顔で侑撫が見つめる。 そこで、数秒ほど侑磨と侑撫の間に沈黙が流れる。 「…いいよ、だって「「きゃーーーー!!!!」」」 侑撫が何かを言いかけたところで周りにいた女子たちが再び黄色い歓声を上げる。 「デレた!美少年がデレた!!」 「どうしよう、今のムービー取っておけばよかったぁ!」 「なっ…」 突然の出来事に侑磨の思考回路が止まる。 しかも、なぜか日ごろの感謝を侑撫にしてしまった恥ずかしさが更に追い打ちをかけてくる。 耳の先まで熱を帯びてしまっていることが侑磨自身はっきりと分かる。 (やばいやばいやばい、どうして俺はあんな事を言ったんだ!?と、とにかくこの場から逃げないと!) 「え、あ、う、じゃ、じゃあな!侑撫!」 「う、うん」 侑撫の反応を見る前に、侑磨は既に走り去っていた。 受け取ったカギをつまむようにして持ち、熊のストラップがぶらぶらと揺れるのを見ながら侑撫は考える。 (いつもありがとう…か。そんな風に思われてたんだ…) 周りではしゃいでいる女子たちからいつも通りの温度差を感じながら侑撫が一人静かに席に着いた。
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