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「くそぅ…酷い目に遭った」
目を真っ赤にして今にも泣き出しそうな顔で侑磨が席に着く。
「一部始終見てたから説明はいらないぞー」
大悟がおそらく3つ目であろうパンの袋を開けながら言う。
(俺が席を離れているうちにパンを一つたいらげるとは…
さすが早食い大食いの大悟)
未だに埋まらない身長10センチの差は中々縮まらない。
くそ、と舌打ちをしながら侑磨が背もたれにもたれかかって力を抜いている。
「……」
ちゆはそんな侑磨をまっすぐに見つめている。
(ちぇっ…何なのよ。ちょっとちやほやされるからってニヤニヤしちゃってさ。…っていうか、なんであたしには日ごろの感謝の言葉がないのよ…!)
侑磨を見る目がジト目になっているのは言うまでもない。
そんなちゆの箸が真っ二つになっているのだが、侑磨はこれっぽっちも気づく気配がない。
「くそっ…今日は何かがおかしい…」
ぶつぶつと何かを言いながら机に肘をついて頭を抱えている。
「そう言えば…さっきの話の続きだけどさ。大悟にもお兄さんがいたよな?やっぱ比べられたりするのか?」
「ん…」
それまで美味しそうにパンを食べていた大悟だったが、急に手を止めてぼーっと机を見ている。
(比べられる…か…)
そんなことを考えながら大悟の頭の中で様々な記憶が走馬灯のように駆け巡る。
「…っ!!」
思わず手に力が入り、持っていたパンがぐしゃっと音を立ててつぶれてしまう。
「…大悟?」
侑磨が心配そうな顔で大悟を見る。
「どうしたの?」
侑磨に続き、ちゆも心配そうな素振りを見せたことではっと我に返る大悟。
(…まずい。思わずやってしまった)
「え、あ、そうだな。まぁ同じ親から生まれてるんだからそりゃ比べられるだろう?」
笑いながら適当な事を言って誤魔化す。
「やっぱりそうなのかー…。くそっ」
侑磨が悔しそうにうなだれる。
大悟のいつもとは違う様子を目の当たりにしたせいか、これ以上の追及はしないようだ。
(侑磨に気を遣われるとはな…。俺もまだまだだな)
圧縮されてしまったパンを具をこぼさないように慎重に食べる。
「そういえば、侑磨」
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