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「ん…?」
ゆっくりと瞼を開く。
「あれ、やっぱり俺寝ちゃったのか…?」
ごしごしと瞼をこすり、起き上がる。
ようやく焦点が合い始め、周りを見渡す。
「……!!?」
そして、侑磨の中に残っていた眠気がすべて吹き飛ぶ。
侑磨の周りには、何も無いただただ白い空間だけが広がっていた。
「な、なんだよ、ここ…!!?」
あまりにも突然の出来事に動揺を隠せない。
(確か、いつも通り美術室に行って、窓際の席に座って、それから図鑑を見ようとして…!?)
そう言えば、と思い、侑磨が自分の右手を確認してみる。
そこには、美術室で見つけた小さな青い石が握られていた。
「う、うわぁっ!!?」
妙に怖くなり、青い石を放り投げる。
からん、からんと軽い音が白い空間に響く。
(何なんだよ、ここ…!!?どこなんだよ!?)
とりあえず少し歩いてみたが、少しも景色は変わらない。
木もなければ建物すら存在しない。
何もない、真っ白な空間。
白以外に色がなく、五感が奪われるような妙な脱力感が侑磨を襲う。
更にもう少し歩いてみるのだが、やはり何も無く、人すらもいない。
(壁もないってことはどこかの建物の室内…ってわけでもなさそうだな)
「誰かいませんかー!!ちゆー!!…は今日いないんだっけ。大悟ぉー!!」
とりあえず誰かがいないか叫んでみる。
が、白い空間に侑磨の声が響くだけで誰からも応答はない。
(くそっ…なんなんだよ!?今日はどうしてこんな意味の分からないことばっかり!)
歩きつかれ、思わずその場に座り込む。
(俺…ここから出られないのかな)
そのまま大の字で寝転がり、天井なのか良く分からない白い景色を見ながら考える。
「侑撫…心配してるかな」
ふと、双子の姉である侑撫の顔が浮かぶ。
一方的な双子テレパシーを使う侑撫なら、この状況を察してどこかを探しているかもしれない。
だとすれば、侑磨は更に深く罪悪感を感じてしまう。
「俺の出来が悪いから…自分の時間がないから侑撫はあんな何かを諦めたような顔をするのかな…」
どうせ誰にも聞こえていないだろうと思い、一人で呟く。
そこで、ふと昼休みの事が頭によぎる。
『いいよ、だって…』
あの時、侑名はそう言いかけていた。
(あの続きは一体何だったんだろう…?)
「侑磨」
「えっ!?」
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