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階段でこけそうになりながらもバタバタと重たい足取りで台所に入る。
侑撫の言う通り机の上に一人分の目玉焼きが乗っているトーストがある。
(すぐに食べられるトーストをチョイスしているのはさすがと言わざるを得ないな…)
侑撫の完璧さを改めて思い知りながら、侑磨はトーストをかじる。
双子の姉である内海侑撫。
才色兼備、文武両道。
侑磨とは真逆の人物。
(どうして俺の親はこんな不公平な産み方を…。いや、育て方か?)
透明のコップの中に冷蔵庫から取り出した牛乳を注ぎ、侑磨は考える。
(まぁ…。そもそも親の顔知らないしな。こんな文句を言っても仕方ないか)
注いだ牛乳を一気に飲み干し、慌ただしく台所を出る。
侑磨が玄関で靴を履こうとすると、靴箱の上に紙が置かれてある事に気づく。
『どうせ家のカギを部屋に忘れているだろうからここに置いておきます。戸締りよろしく』
綺麗な文字で書かれた紙の右下には、侑撫が常に持っている可愛い熊のキーホルダーが付いたカギが置かれている。
「……」
侑磨は無言のまま、自分がいつもカギを入れているはずの左ポケットの中に手を突っ込む。
「…ない…」
さすがは双子。と侑磨は心の中で思った。
だが、侑磨は侑撫の行動を全く把握できていない。
いつも、侑磨の先に行くのは侑撫だ。
(…なんて一方的な双子テレパシー。…って俺が侑撫に通じて無い時点でテレパシーとは言えないか…)
「すまん、侑撫。後で返すから」
そう言って置手紙の上に置かれているカギを手に取り、外へと出る。
「あぁー…暑い」
夏の熱気を感じながらも振り返り、玄関のカギを閉める。
(よし、これでオッケーだな)
何度もドアノブを引いて、かたい手ごたえを確認した後、侑磨は裏に止めてある自転車へと走って向かった。
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