Number 1

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「いってきまーす…っと」 誰もいない家に向かって一人呟く。 (こんなことをしても特に意味無いのは分かってるけど、習慣となっているので仕方がない) 誰に聞かれたわけでもないがなぜか頭の中で一人で返事をする。 侑磨と侑撫が済む家には両親が居ない。 両親もいなければ、親戚も居ない。 侑磨と侑撫の二人だけである。 両親は物心ついたころから姿がなく、親戚の老夫婦は侑磨と侑撫が小学生になってすぐに二人とも亡くなった…らしい。 理由は分からないが、侑磨にはその時の記憶がない。 だが、侑磨はこの事を特に辛いと思ったことはない。 『両親が居なくて大変じゃない?』と良く聞かれていたが、そもそも両親というものがよく分からない。 (強いて言うならば、侑撫が俺の親なのか?) ペダルをこぎながらふと侑磨は思う。 (俺は辛くないけど…侑撫はどうなんだろう) 侑撫はたまに寂しそうな顔をする。 何かが悲しい…というよりも、何かを諦めているように侑磨は常に感じていた。 そもそも、侑撫は感情の起伏が乏しい。 笑ったり、怒ったりはするのだがあまり変化は見られない。 それが時に自分のせいなのではないか?と侑磨は思う。 ただでさえ何もできない侑磨の世話をするのは、予想以上に過酷なはずだ。 今朝のような出来事がたまに起きるぐらいなら可愛いものだが、侑磨の場合はほぼ毎日だ。 「俺のせい…なのかな」 ふと気がつくと、信号が赤になっている。 「おっと」 急いでブレーキをかけ、横断歩道の前で止まる。 目の前を何台もの車が横切っていく。 (でも…侑撫がどう思っているのかなんて今更聞けないしな…) 「こういう時に双子テレパシーが使えたらなぁ…」 「おはよう、侑磨」 「うぉぉっ!!?」
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