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侑磨へ再び疑いの視線を向ける大悟。
「だ、大丈夫だって!」
「お、おはよう!」
「うぉぉ!!?」
侑磨が再び顔を反らすと、その反らした方向に大悟と同じ幼馴染である高原ちゆがいた。
「なっ、ちょっ、近い!!」
そう言ってちゆが侑磨か物凄い早さで顔を反らす。
顔を真っ赤にしたちゆは、成績は上の下、運動は全くできない。
そして少し茶色の髪を腰の辺りまで伸ばし、侑撫には劣るものの整った顔立ちをしている。
髪の色について本人は地毛だと言っているのだが、頭髪検査に引っ掛かっているところを侑磨は何度も見かけたことがある。
「ふぅ…。アツいアツい。さて、信号も変わった事だし、俺はもう行きますよ、っと」
そう言って大悟がペダルをこぎ始める。
「な、おい、待て大悟!何がアツいんだ!!?」
「あ、ちょっと、待ちなさいよ!あたしのあいさつの返事は!?」
大悟を追いかけるように侑磨が進み、その侑磨を追いかけるようにちゆが進む。
いつもと変わらない、おなじみの光景である。
ちゆは何かと侑磨につっかかる。
その理由は大悟からすれば明白なのだが、侑磨は全く気が付くそぶりがない。
「おい、大悟!お前さっきの台詞俺にも分かるようにちゃんと説明しろよ!?」
侑磨が数メートル先を走る大悟に向かって叫ぶ。
「あー?じゃあどっかででかい鏡でも買ってこいよ」
対応がめんどくさくなった大悟が投げやりに言う。
「い、意味わかんねぇ!?」
「だ、だから!へ、返事を…!」
侑磨の後ろを必死に付いてきていたちゆが肩を大きく動かして呼吸をしながら侑磨に向かって叫ぶ。
「ちっ、そんなに返事が大事なのか!?はいはい、おはようございますぅ!!」
「ちょっと、何よその言い方ー!!?」
「やれやれ…」
似た者同士である二人の痴話喧嘩を背中で聞きながら、大悟が肩をすくめる。
(ここまでされておいて自覚なし…か。ちゆもかわいそうに)
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