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「あ、あんたってやつは…!!」
もっと優しい挨拶を期待していたのだろう、ちゆがこめかみに青筋を浮かべて怒りを露わにしている。
「なんだよ…!?文句があるならはっきり言えよ…!!?」
そういう侑磨も、同じようにこめかみに青筋を浮かべている。
だが、基本的に女子のような顔立ちをしているのでそこまで迫力は無い。
「おい、お前ら。そろそろ着くぞ。前気をつけろよ…って、あ。」
大悟がそう言って振り向いたが、すでに遅かった。
「うぶっ!?」
「きゃっ!?」
そう言ってガシャン!と大きな金属音が2つ響く。
3人が通う高校には、校門の近くに大きな樹が植えられている。
学校の設計者は何を意図して作ったのかは分からないが、校門のど真ん中に堂々とそびえ立っている。
車は専用の入口があるので問題ないが、自転車や歩行者にはそうもいかない。
割と校門から近いので、この二人のようによそ見をするとぶつかってしまう事で有名なのだ。
そのため、『新入生殺し』と在校生の間で密かに呼ばれている。
「…やれやれ…」
そう言って大悟は再び肩をすくめる。
「い、痛い…」
「うぅ…もう、ほんっと信じらんない!!」
痛みを泣きそうになりながら我慢をする侑磨に額を抑えながら侑磨に罵声を浴びせるちゆ。
(これじゃどっちが女子だか分かんないよな…。一度制服を交換してみろよ、と提案してみようか)
そんなことを考えながら二人の様子を優しく見守る大悟。
「まったく…。ほら、自転車置いたら保健室に行くぞ」
そう言って地面に座り込んでいる二人を促す。
周りの生徒がこちらをじろじろと見ているのだが、そんな視線にはもう慣れている。
「うぅ…分かった」
「もう…可愛い女子の顔に傷をつけるってどうなの!?責任とって…はっ!?せ、責任を取るって!!?」
「……」
(ま、楽しいからいいか)
二人の前を歩く大悟からは自然と笑みがこぼれていた。
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