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変な2人組が去ってから、10分。
簡単な引き継ぎを終わらせ、上がりまで後5分。
駐車場の見回りをして、時間を潰そうと裏口から出ると、聞き覚えのある声がした。
「あんた、何言ってんのかわかってます?
新手のナンパですか?」
「まぁ、そうとってもらってもいいんだけど。
どうする?」
まだ、居たんだ。
しかし、又面白いことしてる。
女の方からしてるから逆ナンってやつか。
「利害が一致してるんじゃない?
私は旅行に行きたい。でも、一人はつまんない。
あんたも、旅行に行きたい。
私は車持ってる。ガソリン代もカード落としだから私持ち。」
悪くない条件ってか、完全に男に得が多い。
俺が行きたいくらいだ。
二人は俺には気づいていないらしく、話を進めていく。
「あんた、頭おかしい?
どこの世界に知り合ったばっかの男と旅行に行こうと思う女がいんだよ!
話もうますぎる。何か企んでるわけ?」
こいつ、若い癖に頭かたいな。
行けばいいのに。ラッキーな話だぞ。
「あんた、男の癖に守りに入りすぎなんじゃない?
誰もガキに手出さないわよ!」
「そんな心配してない。
ってか、ラッキー過ぎるから怖いんだよ。」
こいつ、不憫だな~。
ラッキーが怖いとか後ろ向きだな。
「はぁ。何それ?」
「俺、最近つきまくってんですよ。
人生のラッキー全部使ってんのかって疑うくらい。
その上、こんな話されても…」
「羨ましい。」
その通り。こいつ、いい人生だな。
俺みたいなしがないビデオ店員とは大違いだ。
女もそう思ってるんだろう。
心底羨ましそうな声だ。
「よし、分かった。
私にそのラッキー分けてよ。
あんたは、その分変な女と旅行に行くっていうアンラッキーを貰う。
どう?少しはラッキー減るし。
ギブアンドテイクよ。」
女はさも名案だとばかりに、男に畳み掛けた。
男は、完全にのまれてる。
「分かりました。」
「よし。じゃあそこのファミレスで作戦会議しよ。」
男は店を出た時と同じ様に腕を引かれて歩き出した。
時計を見ると、ちょうど上がり時間になっている。
「変な2人組…。」
そのまま、静かに扉を閉めて店に入ると、疲れやら何やらドッときた。
こんな日は、早く帰ろう。
あの二人のいく末も気になったけど
ファミレスまで行くのも、面倒だ。
いつも居る可愛い店員さんが居なければいいと、何ともなしに思った。
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