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窓の向こう側の景色は、すっかり日が暮れかけている様子だ。
それを見て、周囲の全てが青黒い理由が、ようやく完全に理解できた。
側面の窓ガラスは、2枚設置されていた。
僕の視界を左右に分断するように、2枚。
その、窓と窓の中間にある、横幅20cmくらいの仕切りの中央に、幅広のベルトのような物が垂れ下がっている。
それら、ベルトのような物体や、台形の形をした2枚の窓ガラスを見て、ようやく自分にもわかった。
…ここが、車の中だという事に。
自分の体が、限界までリクライニングされたシートに横たわっているという事にも。
どうしてこんな状況になっているのかは未だに全く思い出せない。
…が、自分の状態がようやく理解できた僕は、今度は、反対側を確認する事にした。
再び天井を中継して、首を左側に回す。
すると、自分の座席と同じように、限界まで倒されたシートが見えた。
それと、そのシートの上に横たわっている、人影も。
人影の正体はすぐにわかった。
「光彦(みつひこ)…」
薄暗い闇に横たわるその人影は、間違いなく、光彦のものだった。
僕の幼なじみで、昔から仲が良く、いろんな場所に一緒に出かけ、一緒に遊んだ…光彦の。
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