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…この声は、聞き慣れた光彦の声だ。
僕は、隣りの席…
…おそらくは助手席だと思われる席に横たわっている、光彦の方へと視線を向ける。
光彦は薄く目を開き、天井ではなく、僕の方を見ていた。
「…ん……一樹(かずき)…?」
僕もさっき浮かべていたであろう、ぼんやりとした表情で、光彦がこちらを見つめる。
僕は、少しだけシートから上体を起こし、左の肘で上半身を支えながら、体を光彦の方に捻った。
「光彦、どうして光彦がここに…?
…てゆうか、どうして僕がこんなところに…?」
その僕からの言葉に、眠りから覚めたばかりの光彦は、意味が全くわからないといった様子で、
「…“ここ”…って…?
…“こんなところ”って…?」
と、逆に聞き返してきた。
僕は、まだぼんやりしている光彦に、まず、窓の外の景色を見せる事にした。
光彦側に設置された、側面の窓を指差す。
「そこ、見てよ。
僕達、なんか森の中にいるみたいなんだ。
森の中の、車の中に。
…もしかして、光彦にもわかんない?」
光彦は、僕と同じように上体を起こして、僕が指差す方向を見る。
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