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「…ほんとだ…。
…森の…中だ…。
それに……車の、中だ…」
そう呟きながら、次第に覚醒していく様子の光彦。
そして今度は、先刻の僕の行動とは異なり、体を起こして正面を見る。
その光彦の行動につられるように、僕も体を起こした。
僕が“それ”に気づくのと、光彦が声を上げたのは、全く同じタイミングだった。
「あれっ?」
少し驚いたような声を上げながら、フロントガラスを見つめる光彦。
僕の目も、今、光彦が見ているであろう、フロントガラスの中央を見つめていた。
その中央部分以外は、先程見た外の景色と同じように、青黒い空間と、その空間に乱立する森の木々が映っている。
僕の手前には、一般的な丸いハンドルがあり、その付け根には、一般的な計器類が設置されている。
そしてその左隣りにも、やはり一般的な空調調整のつまみや、オーディオ機器などがある。
今列挙したそれらに見覚えはないものの、それらは極めて普通な自動車の内装だった。
…しかし今、僕が目にしている部分…
…フロントガラスの中央部分は、明らかに普通ではなかった。
そこには一枚、大きな貼り紙が施されていた。
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