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ただそれだけなら、普通ではないとはいえ、誰かが悪戯で貼っただけの、単なる紙切れと一蹴できる。
…のだが、そこには、おそらくは赤で書かれた、数行の文章があった。
僕と光彦は、薄暗闇の中で必死に目を凝らし、その文章を読んでいた。
そんな僕たちの背後から、突然、声が現れた。
「…最後の1人になるまで、この車は動かない。
あの時のように。
そしてドアが開くこともない。
あの時のように…」
…綺麗に澄んだ、少女の声が。
突然の出来事に、僕と光彦の体が跳ねあがる。
そしてその声の主に、おそらく二人とも見当がついてはいたものの、慌てて後部座席に振り向いた。
「「織波!」」
僕と光彦の声が重なる。
振り向いたそこには、後部座席からこちらに身を乗り出した、先刻の織波の姿があった。
「驚かせちゃったみたいね?
それはごめん。
でも、“そこ”にそう書いてあったから」
織波が、正面の貼り紙を指差しながら言う。
その言葉通りだった。
織波が声を発する直前に、僕はちょうど全文を読み終わっていたが、その文面は、今さっきの織波の言葉通り。
一字一句、全く同じ。
そして、脅迫するようなその文面は、たとえ悪戯だとしても、かなり趣味の悪いものだった。
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