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駅のホームで俺は、みくと出逢った日の事を思い出していた。
《3番線のホームにД行き各駅停車の電車が参りまぁす。》
出会いは近くの河原だった。
会社の帰り道、電車を降りると川に沿って道が続いている。
そこで、金網に寄りかかりながら、切なそうに夕日を見詰めているみくがいた。
ずっと昔から何かを待っている様な顔をして。
どうしてか惹かれた俺は声をかけた。
「どうかしたんですか?」
その時、振り向いたみくは少し涙目で、夕日に照らされた顔はこの世界のものとは思えない位、美しくかった。
「うぅん、何でも無い。ここでこうして夕日を見てるのが好きなの。」
「綺麗…。ですもんね。」
一瞬にして、心を持っていかれた。
「良かったら、一緒に見てく?」
みくは毎日いた。
そして、俺達二人は毎日夕日が沈むまでそこにいた。
特に何も喋る事無く、只、毎日夕日を見た。
ある日の帰り道、同じ方向に歩く二人。
「良かったらさ、家で飯でも食ってかね?いやさ、田舎からなんかいっぱい野菜とか来て一人じゃ食いきん無いしさ。」
みくは俺の目を覗き込む。
「いや、無理にとは言わないけど…。」
「ありがと、じゃあご馳走になろっかな。」
そこから、俺達は付き合う様になった。
《Ы駅~、Ы駅。》
「あっ、すいません降ります。」
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