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「意味わからん」
「だーかーら!今のまたきちはそこら辺の女の子よりずっと可愛いの!いつも世界一可愛いけどさ!だから誰かに見せたらだめだよって言ってんの!悪い虫がいっぱい付いちゃうからね。」
びっくりしたよ本当に、と言いながら抱きしめられる。
だから、と言われても俺にはさっぱり理解できないけど……独占欲のようなものなのかと。
ヒゲの濃い女装男にどんな虫が付くねん、と思ったが抱きしめられている体温が心地好いから口は開かなかった。
「またきちー。」
「何?」
「襲ってもいい?」
「だめ。どこや思ってん。」
「じゃあこれからうち決定で。」
全くこいつは変態らしいことで頭が一杯な様で。
でも結局ノコノコと着いて行ってしまうんだきっと。
この温もりに、依存してしまっているから。
「…あ、」
「なに?」
「さっき平野と大島に写メ、いっぱい撮られた」
「え?!ちょっ、あいつら!!」
するりと腕を解いて綾部は一目散に部屋を出て行った。
…多分、もう遅いやろ。
ひとつだけ溜息をついてゆっくり綾部の後を追って共同の楽屋に入った。
「またよしー!超可愛いじゃんこれー!」
「崇!!お前この写メ消せよ!!」
「えー、もうみんなで待ち受けにしちゃったしー!」
「俺のまたきちを共有してんじゃねえ!!」
「……誰が誰のやねん。」
本日ふたつ目の溜息をついて、そっと楽屋を後にした。
甘い気持ちが消えたところで、早く化粧を落として煩い連中が自分を追いかけてくる前にさっさと帰宅しようと決めた。
end
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