第一話 もう一人の君へ

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「どれくらいで着きますかね?」 タクシーに乗りしばらくして何か話題が無いものかと考えた結果、これが浮かんだ。 「………そうですね。1時間ちょっとですよ」 バックミラーで一瞬こちらに視線を向け答える運転手さん。 「そうですか……」 …………。 無理でした。はい。 というかこんなにコミュニケーション能力無かったかなぁ……自分。 まぁ……空気が空気だから仕方ないのかな?運転手さん見るからにベラベラ話すタイプじゃなさそうだし。 ………はぁ、前いた国のテンションのままだからなぁ。まず、日本のテンションに慣れないと。 そう思いつつ携帯を手に取る。開くとメールが届いていた。 誰かな……と楽しく考える必要もなく、宛先は親父からだ。というかこの携帯親父のしか入っておりません。早く友達作ってメルアドの交換でもしたいなぁ……。 ま、メールの内容はもう着いたか的なことだったんだけど。 「………ん。よし」 適当に返事を書いて携帯を閉じた。さぁ、本格的に約1時間が暇になったわけだ。 何をしようにも何も持ってきてない。ゲームといった類も持ってないし、得意じゃない。 ここに来る前は日本の教科の参考書とかも読んでたんだけど、もういいし………。 …………そうだな。寝よう。 元々そんなに寝れてなかったし、このタクシーの絶妙な揺れ具合良い眠りを誘いそうだ。 そんな事を考えて小さなバックを枕にして寝てみる。 あぁ……バックにタオルが有るせいかいい枕具合だ。 ん?もちろん寝転がってはいませんよ?窓のところにバックを立てかけているから。 それにしても、いい。だんだん眠くなってきた。 オレの目蓋は徐々に重くなっていき、やがて目の前は完全な闇に支配された。
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