第一話 もう一人の君へ

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「―――さん。お客さん」 「………ん」 深い闇から淡々とした声が聞こえ、視界に明かりが入ってくる。 「あぁ、すいません」 どうやら熟睡してしまったらしい。思っていたより体は疲れていたみたいだ。 「着きましたよ。第一公園」 オレの謝罪にコクリと頷いて答え、それまた淡々とした口調で言う運転手さん。 「そうですか。いくらですか?」 今まで枕にしていたバックに手を入れ財布を取り出す。 「2800円です」 それだけ答えた運転手さんにオレはそうですかとだけ答え、財布からお札を取り出す。 「それじゃありがとうございました」 お釣りを貰いタクシーから降りると目の前には少しばかり大きめの公園があった。 「ちょっと入ってみるか」 子供心が刺激されて、公園にあったブランコに座る。 軽く足で地面を蹴ると少し軋んだ鎖の音と共にブランコが前後ろと動き出す。 「ん~馴染めるかなぁ日本」 もう一度地面を蹴ってブランコに勢いをつけながら呟く。 正直言って不安な事だらけだ。 オレが今までいた国はアメリカ。つまり外国なのだ。日本とは文化も様式も違う。 「ま、それも混みでの勉強みたいなものなのだろうけど」 オレがここ――日本に来た理由は、親父に日本の文化を学んでおけという何分大まかな発案からだった。 ………まぁ、後は母さんの生まれたこの町を見て来いと。 とここまで考えてふと空を見る。空は赤みがかかっていて、夕日ももうしばらくしたら山に隠れるみたいだ。 「さ、急がないと。向こうも心配してるといけないし」 向こうと言うのはオレの居候先だったりする。まぁ、いきなり一人暮らしと言うのは無理だと考えた親父なりの気配りだろう。 ちなみに居候先の主人?は親父の同級生らしい。 ブランコから立ち上がり、荷物を手にとって公園から出ようとする。が、 「ちょっとそこの方!!」 オレの前に誰か立ちはだかった。
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