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「………はい?」
目の前に立った人物に不信感を感じながら視線を上に上げていく。
「この方をこの町で見ませんでしたか?」
「…………」
「聞いていますの?」
「あっ……はい」
危ない危ない。思わず見とれてしまった。
でも無理もない。それほど目の前にいる人―――"女性"が美しかったから。
紫色の髪、そしてどこか異様な雰囲気を漂わせている女性。凄く魅力的だった。
「いえ……すいません。オレ今日ここの町に来たものですから」
綺麗な女性に対して手を振って否定する。
「あら……?」
女性は少し拍子抜けな顔をして、オレの近くにあるスーツケースや鞄に視線を移す。
「あ~失礼しましたわ。すいません。人捜しをしているものですから」
そして、丁寧な物腰でお辞儀をした。
「いっ、いえ。全然そんな気にしてないですから。それにしても人捜しですか………」
オレは今は女性の膝辺りにある写真を見ながらそう言う。
写真の中の人、多分男性は極端に長い髪をしていた。目も見えないくらいの前髪にチラリと見える眼鏡。
「彼氏かなんかですか?」
冗談っぽく言う。
すると、女性は急に顔をバッと上げた。
「かかかかか彼氏!?そそそう見えますの!?あなたには!?」
女性は急に顔を赤くして、しどろもどろになってしまった。
……あれ?もしかして冗談通じなかった?しかも、怒ってる?
「あ、いやそうですよね?あ―――」
「キタキタキタキタ来ましたわー!!ついに彼女に見られる日がぁぁぁぁあ!!」
うおっ!?なんだ?喜んでるのか?
「むふふ―!!そうとなれば早く捜さねばなりませんわね!!……そこの方、ありがとうございましたわ!!それでは、アデュー!!」
女性は、オレに結局あれから何も喋らせぬままかなりのスピードで公園を出て行ってしまった。
なんか走ってる時も終始日本語じゃない言葉を大声で言っていたけど。
………うん。まぁもう少しで春だしね。あぁ言う人もいると思うんだオレは。
―――その後、同じ風に外人の二人組にさっきの女性の写真を見せられながら行方を聞かれたのは余談だ。
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