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「文ちゃん、ごめんねー?家の馬鹿息子眠りこけてたものだから夕飯遅くなっちゃって」
「あややや、お気になさらず。お母様」
「ちょっ、ソイル。醤油取って」
「・・・・・」
無言で俺の目の前の醤油差しを手に取り、親父に突き出す。そして目の前で楽しそうに会話する母親と文に痛烈な違和感を感じながら、炊き立ての白米を口の中に掻き込む。その間も睨む様に、目の前の異様な光景を見続けているが。
「なんだか今日は何時にもまして喋らないな。ソイル?」
「・・・問題ない」
親父の言葉にも憮然と切り替えし、何の味噌汁かも具も分からないほどに混乱しながら胃の中に流し込み一刻も早くここから抜け出そうと考える。懐かしの実家に帰って来たと思ったら幻想郷の住人が居る。しかも両親とも突っ込まない。
(いや、目の前で烏天狗の翼出してるんだから突っ込めよ。二人共・・・)
両親とも気づいてて気にしてないし。俺が可笑しいのか?コレ。
「・・・・・・・ご馳走様」
凄く納得いかないがおかずのとんかつの最後の一切れを口の中に放り込み、咀嚼して嚥下し、そそくさと自分の食器をシンクに置き自分の部屋へと足を進める。
「あんた、せっかく文ちゃんが来てるんだからもうチョイ待ったらどう?」
「・・・・・・部屋に、いる」
もう訳がわからないこの状況。兎に角落ち着いて思考したい俺は母親の言葉に一言ずつ言い聞かせるように言い放ち、部屋へと逃げるように滑り込む。
「一体全体どうなってるってんだ・・・」
独り言を吐き出しながら肩を竦め、ふとタンスの上に飾られて鈍く光を放つコルトガバメントM1911を見やり首を傾げる。
(あ?この時のモデルガンでガバメントなんて持ってたっけか?俺)
ソイツに手を伸ばし、右手に取るとソイツはズシリと金属質な硬さと重さを片手に伝えてくる。
「おいおい・・・・マジモンかよ・・・ご丁寧に弾薬箱とマガジン付きか」
市販の(と言っても普通はこんな片田舎。ましてや日本にあるわけない)45ACP弾の弾薬箱と5つのマガジンを手に取り、しかめっ面を晒しながら淀みない動作で各パーツの状態を確認する。CQCスタイルに合わせてグリップとトリガーガードが俺の手に馴染む様に削られている。ガンオイルも差して間もないようだ。状態は万全。何時でも使える。
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