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「それにしても、さっき恭介の名前が呼ばれたからビックリしちゃった。帰ってくるなら連絡くれればいいのに」
「全くだ」
僕の事を心配してくれた少女とは対照的に、男の方はご立腹の様だ。
酸素不足により落ちていた思考力が回復してきて気付いた事がある。もしかしたら、この二人は八年前の友人だったのではないだろうか?
「あの…変な事を聞きますが、二人は僕の友達ですか?」
僕の言葉に二人が固まった。早く復帰したのは女の子の方だった。
「えっと…何言ってるの?」
困惑した表情で彼女は問う。
どうやら正解の様だ。なら、言わなきゃいけない。
「…実は、記憶障害で二年前以前の記憶が無いんです。…すみません」
二人の表情は困惑から驚愕に変わった。それはそうだ。久し振りに会った友人に記憶喪失になりました、と言われたら、誰でもこうなるだろう。
「嘘だろ?…本当に俺達の事、憶えてねぇのかよ?」
男の方が僕の両肩を掴み、問う。
「…ごめん……」
どの位の間だろうか。周りは皆ざわついてる中、僕達三人は沈黙した。が、それはもう一人の少女によって破られた。
「恭ちゃん!!」
声のした方に視線を向ける。目に映ったのは、一人の女の子がこちらに凄い勢いで歩いて来て、僕の胸倉を掴む、という光景だった。
先程まで一緒に沈黙していた二人が顔を見合わせて、女の子の方が“不味い、舞の事を忘れてた!”と言った。
「…わたしに会うのがそんなに嫌だった?」
目の前の少女は目に涙を浮かべ、僕の事を睨み付けている。
「舞、落ち着けっ。何があったかは知らんが、多分、理由があ・・・」
「玲司は黙っててっ」
女の子は胸倉を掴んだまま、睨みを効かせて放った一言で男の言葉を遮り、すぐこちらに視線を戻した。
「…恭ちゃんのっ…バカーーっ」
言葉と共に、彼女の右拳が俺の左頬に向けて放たれた。絶妙な捻りの入った右ストレートに吹っ飛ばされたのを最後に、僕は意識を手放した。
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