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いくつもの電車を乗り継ぐこと四時間。漸く目的地に着いた電車の扉が開いた。外に出ると春の柔らかな風が肌を撫でる。出発した電車が遮ってた太陽光の心地よさを感じながら、僕は駅の出口へと向かった。
物静かな街。物静かといっても、別に寂れてる訳じゃない。ただ、今まで騒々しい都会で暮らしていたため、そのように感じるのだ。現に、駅前にはある程度、人が行き交ってるし、規模は小さいが、バスターミナルもある。
ここは嘉指那町(かしなちょう)。僕はこの春、小二の夏まで暮らしていたこの街に移り住むことになった。普通に考えれば帰って来た、ということになるのだろうが、帰ってきたという実感が全く湧かない、懐かしさも感じない。なぜなら、僕にはこの街の思い出が無いから。
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