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入学式が終わり、教室に戻った。僕の席は窓際の一番後ろなので、外を見ながら一息吐いている。
「ようっ、恭介!」
突然だった。後ろから男の声が僕の名を呼んだと思ったら、僕の首に腕が回され、それが僕の首を絞めた。
「っ!……誰…!?」
僕は後ろの男に問う。
「誰だぁ? お前、親友の名前を忘れたとは言わせねぇぞ」
男の首を絞める力が強くなった。これ以上は不味い。ギブアップの合図に、僕は男の腕を軽く何度も叩いた。入学式早々である。これで終わらなければ、冗談では済まない。
「いきなり連絡が取れなくなったと思ったら、何の音沙汰も無しに帰って来やがって。どれだけ心配したと思ってんだ!?」
男の言ってる事が僕には理解出来ない。僕が流石に抵抗しようとしたその時だった。
「ほら、その辺にしないと。恭介死んじゃうよ?」
薄れ行く意識の中、今度は女の子の声が耳に届く。
「ったく、分かったよ。ほれ」
その言葉と共に、ようやく男の腕が解かれた。僕は咳き込みながら、体内に空気を入れ、呼吸を整える。
「大丈夫?」
男を止めた声の主であろう女の子が僕の背中を摩りながら問う。
「…何とか」
どうやら、相手に敵意がある訳では無さそうだ。普通に考えれば、これだけ遠い町に引っ越して来たのだから、僕に敵意を持ってる人間なんて居るわけが無いのだ。
呼吸が落ち着いた所で二人の姿を確認する。
男は撓(しな)るように伸びた短髪に鋭い眼。身長は僕よりも高く、身体もがっしりしている。
女の子の方は凛とした瞳に、旋毛の少し下で纏められた茶髪に頬の下まで垂れている鬢(びん)。彼女からは活発そうな印象を受けた。
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