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…
……
………?
「おかしい、明らかにおかしい」
白い部屋。窓は無く、六畳半ぐらいしかない狭い部屋に、ソファやテーブル。おまけにテレビやマイクなどが置かれてる。
「何がおかしい、今選曲中なんだから次歌うの考えておけよ」
リモコンらしきものを片手に携帯を睨み、分厚い本をペラペラと捲っていく糸宮さん。いやいやいやいや、
「おかしすぎんだろ!! なんで登校日にカラオケ来てんだよ俺ら!!」
朝の登校風景、いつも通りの道を歩いていたら事件が起きた。そう、拉致だ。しかも監禁。これがおかしくなくてなんだってんだよ!!
「ふーりーむーくーなぁー! 涙をみっせるぅなぁ!! あいげっ!」
「うっぜぇんだよ神楽だぁってろ!」
何も考えずに大熱唱を続ける神楽を蹴り飛ばし、改めて糸宮に向き直る。なにこれ、なんなんですかこれ。
「まあ、あれだ。決戦前でナーバスにならないようにって出雲崎の配慮だ。俺に言うな」
「それで学校サボるってどうなの!?」
生徒会長権限とかそんなんじゃねえし! どう考えても生徒会がグルになった授業ボイコットだし! ツッコミ所満載でツッコミきれんわ!
「まぁ楽しもうよ東ちゃん」
「まだそれ続ける気か……!?」
「当然、僕達が卒業するまで伝統として残しておくよ」
あと一年無いだろお前ら。すると、今まで黙っていた出雲崎が動く。
「そうだ。海に行こう」
「脳みそにカニミソでも詰まってんのかお前。急に故郷が恋しくなったか半魚人」
「シャラップ、俺の計画に撤退の二文字無し! 夏といったら海、間違えたビキニだろ!」
「いや合ってる、合ってるよ。言い直したらただの変態だから」
グッと握り拳を作り、キリっとした顔で立ち上がった出雲崎を見ながら、なぜか冷静に対処出来た俺。カニミソじゃなくてマル〇メ味噌が詰まってるらしい。そうだと思えばこのデカイ三歳児にも対応出来る。
「つうか海って言ったって、この辺りじゃ泳げる砂浜なんて無いだろ。どこに行くつもりだ」
「なぁに、ちょろっと親の車をちょっぱねてサクッと日本海側に行けばなんとかなるだろ」
「免許取ってから言えや! 体育祭に向けての骨休めなのに、体育祭に間に合わなくなんだろうが!」
そして、こいつが親の車をパクる所を力業で食い止めて今日を終えた。つうか骨休めのはずが、むしろ骨折り損のくたびれ儲けになったのは言うまでもない。
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