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今日は普通に登校中、右見て左見て異常が無いことを確認する。なんせ家族と一緒に出てきたのだ。拉致出来るはずがない。
全く、昨日は散々だった。せっかくのバイト休日を無意味な事に消費しちまったぜ。
「兄ちゃん、顔がめちゃくちゃしかめっ面だよ」
「ただでさえ二点五枚目なのにこれじゃあ三枚目だよな」
「いや、兄さんは元から四枚目だから」
「なに散々言ってくれてんのお前ら!? しかも四枚目とか初めて聞く悪口なんだけど!?」
なんで俺はここまで言われたい放題になっているのだろう。おかしい。南に至っては救世主のはず。
『ありがとうお兄ちゃん、大好「誰だそれバロス」き♪』ぐらい言ってくれても良いはずだ!
「って南さん!? 人の妄想にちょっかい出すってどんなスキルですか!?」
「いや、兄さんの顔がもう……まるで酔っ払って笑顔のままデレデレして、女と勘違いしたサンダース人形と一緒に帰宅したサラリーマンみたいな顔してたから」
「何言ってるか分からないけど酷い言われよう……!」
この子には良心が無いのか……! 兄ちゃんちょっと心配!
『あ、出雲崎さんですね』
突如、警戒担当の風子から警報が鳴り出す。その言葉を聞いた瞬間に、周囲を高速で確認する。右良し左よ……んん……!?
「今、視界に何か居たよう、な!?」
次の瞬間には、俺は地面に倒されていた。正確には、背中側の襟元を掴まれ、全体重をかけて真下に引っ張る。たったそれだけの行動で、後ろに引き倒される。
「いった……!?」
後頭部に鈍痛を感じ、静かに呻く。目の前がチカチカして、結構ヤバい感じである。
「はっはははは! 警戒した所までは良かったんだが、その後はお粗末ね東!」
「てめ、時雨! いきなりなにしやがぁ!」
「あ、時雨さん。おはようございます」
時雨が高らかに笑うと、南が駆け寄って挨拶をする。見事な上下関係である。
兄である俺を踏みつけながら。
「み、南……! 流石に、鳩尾は乗っかられるとキツイ……!」
なんでこんなに甘やかしてるのかは俺にも分からない。ただ分かるのは、妹以外の女が可愛くないって事である。まぁ、ルナちゃんはちょっと、いや……かなり……違うが……。
自分でも分からない感情を整理しながら、なんとか足の下から抜け出す。と同時に、時雨が口を開いた。
「どうせ方向一緒だし、私も混ざるわ」
本日最大の核爆発だ。
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