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平和国にて、こんなサイクロン(詩的表現)みたいな女が居て良いはずが無い。奴の正体はあの世の鬼かはたまた魑魅魍魎か。いわゆる人外だ。
つまり何が言いたいかというと、
(俺、今世紀最大のピーンチ……!)
バイトの出前以外に会いたくない女。それも、俺の知りうる中で最も遭遇してはいけない女だ。因みに最も遭遇しちゃいけない男はあの嘘っぱちFBIのドン(仮)な。
『ねえ、ねえってば!』
「非常事態だ……誰か警報を……警笛を……」
爪をかじりながら身の安全をどう取るか、そんな無限の可能性について考えを巡らせていると、
『……!』
ブツブツ文句を言っていたら、いきなり体が動かなくなった。かじっていた指を、まるで見えないゴムが縮んだかのように無理矢理剥がされ、激痛と共に異常を知らせてくる。
「いった!! え、何!? なんで俺、時雨に向かって歩いてんの!?」
体が、まるで自分の体じゃないように言うことをきかない。まるで、神経からぶっつりと切断されたかのような、そんなぐらい勝手に動く。ちょっと、意味が分からない。
『ふっふっふ……私を無視した罰です』
「え、ちょ、やめ!?」
時雨との距離、およそ1M弱。これはヤバい。あっちも、俺が接近してる事には気づいているが……全く異常が分かってない! 今世紀最大のピンチとか言ってた俺に、今すぐタイムマシーンで戻ってビンタしてやりたい!
「どわぁぁぁぁぁあ!?」
「ちょっ、あずひゃあ!?」
残り1Mなんて距離、あって無いようなもの。しかも、何故か転びそうになりながら全力疾走し始めた俺の体。当然、急ブレーキってなに、おいしいの? みたいな状態だ。派手にぶつかり、派手に転び。これまた派手にもつれて、今俺の上には時雨が乗っかってる。何故?
「い、痛すぎるし重すぎる……」
しかし今はヤバい。とにかくヤバい。俺の命は……まあこの際、成り行きに任せるとして。時雨の柔らかい身体がのし掛かる状態なので……下半身的なのがヤバい。
「おま、失礼な奴だな!! 重くないだろ!! いや待て、……ふふ~ん?」
嫌な笑い、そして徐々に下に行く視線。何より、ここが通学路ってのが一番ヤバい。
「な、なんだよ……」
ゴクリと、冷や汗をかいて生唾を飲み込む。と、
「皆さーん! 北風東君があさだ」
「言うなぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
最悪の登校だ。
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