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「……もう治った」
「ふーん? 良く効く薬で良かったじゃん」
嘘。
ホントは、まだこめかみの辺りが少しズキズキしてる。
もし、まだ痛いんだって正直に答えたら……先生はどうするのかな。
コレ……止めちゃうのかな。
……あれ。
もしかして私、止めて欲しくないって思ってる?
……あーあ。
頭痛に加えて、先生の視線にまでほだされて。
自分から“シようよ”なんて言っちゃうくらいだもん。
私、おかしくなっちゃったのかも。
だけどそんな風に思ってるなんて、絶対に悟られたくなかったから。
まるで思い出したように聞いてくる唇には、ぶっきらぼうな答えを返しておいた。
だいたい、薬にそんな速効性が無い事くらい先生が一番良くわかってる筈。
ほら。
ふっと笑う音と一緒に私にかかる吐息が、その何よりの証拠でしょ?
「そうだ。取り敢えずヤる前に“いただきます”くらいは言っといた方が良いか?」
……なぁんて。
真面目な顔で言いながら。
更に近付いてくる先生の唇の口角がまた引き上げられる。
「バっカじゃな……」
……いの。
それは、あまりにもバカげた問いかけに半ば呆れて発した言葉のつもりだった。
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