毒牙

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でも……。 何よ。全部言い切るまであと二文字だったのに。 もうちょっと待ってくれたって良いじゃない。 なんて思ってる内にも、残りの二文字は軽く重ねられた先生の唇の中に消えていく。 目を瞑る暇も無い程に呆気ない。 ……これが私のファーストキスだった。 「あぁ……バカですよ?」 と、一度ゆっくりと離れていくその唇から、微かに香る煙草の匂い。 あれ……学校って、全面禁煙じゃなかったっけ……。 「煙草の匂いがする……」 笑っちゃうくらい呆気なく終わってしまったファーストキスを惜しむとか。 先生の、ホントにバカとしか思えない発言に何かしら言葉を返してあげるとか……。 思う事はたくさんある筈なのに。 その中から、敢えて煙草の微かな香りを一番に選んで気にしてる自分が何だかおかしくて。 「って……そっちかよ。何? ここ、禁煙の筈なのにおかしいって? ま、俺だってさ、吸う時はわざわざ“秘密の場所”まで行って吸ってるんだぜ? だ・か・ら。多目にみてやってよ」 あ……やっぱり突っ込み所が違ったのかな。 心の中でこっそり自嘲していると、少しだけ残念そうに笑う先生の声が聞こえてきた。
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