毒牙

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……酸素が足りない。 不意にそう思ったのは、ずっと唇を塞がれっ放しで、何だか頭がぼーっとし始めたからなんだと思う。 そう言えば……ちょっと前に、そっちの経験豊富な真奈美さんが言ってたっけ。 上手な人のキスとエッチには毒があるって。 後から後から欲しくて堪らなくなるって。 だとしたら、先生のそれにも毒があるって事? 私も……先生の毒牙にかかっちゃったって事? だって、この感じ……。 まだキスしただけなのに。 こんなにも……彼が欲しくて欲しくて堪らなくなってるんだもの。 「……っ、んん……」 でも、ちょっと限界。 くぐもった声を上げてもう一度先生のシャツを握り直すと、ようやく唇が解放された。 「キスだけで、もうイきそうですって顔だな。そんなに良かった?」 私の頬にかかる横髪を指先で払いながら、先生がまた目を細めてみせる。 っ……危ない。 新しい酸素を一度、胸いっぱいに吸い込こんで。 その問いに答える代わりに彼から視線を逸らしたのは、危うく“はい”って、頷きそうになった自分がいたから。 ……こんなとこで意地張ってみせたって、何の得にもならない。 そんな事くらい、私にもわかってるんだけど……。
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