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* * *
自分でも、何でそう言う風に思ったのかはよくわからない。
でも、これが私にとっての初めてだって事は、絶対に先生にはバレたくなくて。
だから何もかも初めてだらけの刺激の中でも、必死に歯を食い縛ってたのに……。
「痛っ……」
思わず零れたその一言に。
「お前さ……初めてだろ」
あーあ……。
やっぱこう言うのって、隠そうと思ってもわかる人にはわかっちゃうのかな。
そう言って、覆い被さっていた体を少しだけ起こして後ろ頭を掻く先生の顔が、何だか困ってるみたいに見えた。
もしかして、面倒くさいのに手を出したって思ってる?
よく聞くよね。
処女の相手を面倒くさがる男の人は多いって。
先生もきっとそうなんだろな。
そう思った途端。
一気に滲んで拡がった黒い不安の渦に、胸の奥を埋め尽くされた。
たぶん、先生とは……この一回きりの関係なのに。
何でこんな気持ちになるんだろう。
「……何よ。処女は面倒くさい?」
できるだけ冷めた声色でそう呟いたのは……。
今の私にできる、精一杯の強がりだったんだと思う。
「いや? まさか。むしろ大好物。つーか、それならそうって最初に言えよな」
でも、にこりと笑って、私の頭をクシャリと撫でる先生から返ってきた答え。
それは、私の予想していたものとは丸っきり違うものだった。
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