毒牙

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「な……何で知ってるの」 ……と。 名前の件は……まぁ仕方ないとしても。 私が髪を切ったのはつい最近の事なのに、何でそれを知ってるんだろうって。 ここに来るまで先生とは話をした事も無かったんだから、そう疑問に思うのが普通だと思う。 「あ……最悪。ストーカーなんだ」 「アホか。違うわ」 半分だけ顔を覗かせた布団の中。 咄嗟に自分の髪に手をやった私の頭の中に、そんな良からぬ単語が浮かび上がった。 まぁ、先生とあんな事しといて、今更ストーカー呼ばわりするのもおかしな話か。 ……なんて思っていたら、その言葉を呆れ顔で否定した先生の手が私の元に伸びてくる。 思わずビクッと肩をすくめればふっと笑う声がして、クシャリと頭を撫でられた。 「んー……お前が気付いてないってだけで、いつ、何処で、誰に見られてるかわからないって事。だな」 「だからそう言う事をしてる先生が……ストーカー……」 暫くの間、言葉を探すみたいに視線を泳がせる先生だったけれど。 結局その口から返って来たのは、イマイチ質問の答えになっていない答えで。 だからこそ、どうしてもそこへの疑問が拭い切れなかったから。 もう一度、ストーカーって言ってやろうとしたら、急にその視線の先にある先生の目がスッと細まった。
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