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「ふーん? まだそんなに元気な口が利けるなら、もう一ラウンドくらいいけるんじゃないか?」
「む、無理! 絶対無理!」
そのまま耳元に寄せられた唇は、そんな無責任な言葉を残すだけ残して離れていく。
良く考えてみたら、無理とかそう言うレベルの問題じゃないんだけど。
私のお粗末な口からは咄嗟にそんな言葉しか出てこなくて。
同時に目を見開いて、先生が邪魔で思うように引っ張れない布団を、無理矢理口元から目元にまで引っ張り上げた。
「冗談だよ。今日はあれで満足」
「今日……“は”……?」
……それって“次”があるって事?
クスクスと笑う先生の言葉は、何だか引っかかる所ばかりだ。
眉根を寄せてみたって、彼はそれを意に介した様子も見せない。
それどころか、せっかく引き上げた布団を顔の部分だけ無慈悲に捲られたかと思えば……。
「どうせ次の時間も休んでくんだろ? もう邪魔しないから、ゆっくり寝てな。お疲れさん。可愛かったよ、ヤ・エ」
そう言って、露になった唇に触れるだけのキスを落としてくる。
そのキザったらしい言い方と態度に、さっきまでの情事が鮮明に頭の中に蘇ってきて、一気に恥ずかしさが込み上げてきた。
「バっカじゃないの!」
捲られた布団をひっ掴んで、苦し紛れに声を荒げてみたのは良いけれど。
「だから言ったじゃん。バカだって。てか、余程のバカじゃなかったらこんなトコでナニしたりしないっつーの」
「ゔ……」
当然のようにそれを言われてしまうと……返す言葉も無い。
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