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「えー。まじでぇ? でも春木先生って、話し方とかチャラい感じだけど超カッコいいし、そーゆーの本気でヤってそうだよね。でもでも。私、先生になら襲われても良いかも……ねぇ、弥恵もそう思わない?」
まるで夢見る乙女よろしく。
胸の前で手を組んで、そんな事を真面目な顔で口にする真奈美が、急に私に話を振ってくる。
つい先日、気分転換に色を落ち着いたブラウンに染め直して、短く切ったばかりのちょっと前下がりなボブヘアー。
結構気に入ってはいるんだけど、でもそれはまだ完璧には馴染んでいないような気がして。
二人の話よりも、どちらかと言うと自分の髪の方に意識がいってたりする私。
「……思う訳無いじゃん。アホらしい。だいたい、保健室でそんなヤっちゃうなんて、噂にしたって何だってどうかしてるでしょ」
「えー? 何それ。弥恵が冷めてるー」
ため息ひとつ。
摘まんだ毛先に向けていた視線を苦い表情に変えて真奈美に向け直す。
と、如何にもおもしろくないと言う風な顔で、思いっきり唇を尖らされた。
彼女は私を冷めてるって言うけれど……私、間違った事言ってる?
言ってないよね?
「あーあ。私、頭痛くなってきたから、その噂の保健室行ってくる。次の授業たぶん出ないから、先生に言っといてくれる?」
真奈美と話してると、何だか本当に頭痛がしてきた気がして。
のそりと席を立ち上がると、彼女じゃなくて、敢えて桜の方にそうお願いした。
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