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◇◆◇
同日、同時刻。
まるで申し合わせたかのようなタイミングで、茜や大地たちと同じクラスの人間が、関西地方で顔を合わせていた。
「うっわ、しんどっ!」
「――――」
1組の男女が、山中に伸びる長い石段を登りきると、そこには堂々とした門構えの寺社があった。
広い境内に巨大な拝殿があり、社務所と思わしき細長い建物もある。
深い森の奥に建てられていることもあり、その寺は静寂に包まれ、荘厳な雰囲気が漂っていた。
その寺にたどり着いた男女の内、男は全くその荘厳な雰囲気に相応しくない出で立ちをしていた。
サッカー選手のようなジャージを身にまとい、頭も短く刈り込んだ彼はアクティブなスポーツ選手のようで、重くすら感じられる寺社の空気には全くそぐわない。
「なぁ、今の何段あった?」
対し、女子の方はというと、男子とは全く逆に、それ以上なく相応しい恰好をしていた。
白の布地に、黒の線で蝶や花の描かれた和服を纏っているのだ。
決して背の高くない、むしろ年齢以上に幼く見える彼女だが、凛と伸びた背筋が彼女の姿を実際以上に大きく見せていた。
男の問い掛けに、彼女は息ひとつ乱さず静かに答えた。
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