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彼が異空間から取り出すのは、《Hooliguns》専用の手甲。巨大な恭二郎の拳よりも一回り大きい鉄製のそれは、《Hooliguns》で機神を相手取れるよう、特別に開発されたものだ。
「我々は誰の傘下に収まるつもりも無い。《神ノ聖国》は勿論、《悪ノ王国》、《死ノ終国》、《夢ノ王国》、そして我々以外の《都市級》3校にもな」
そして、彼は構えを取る。
腰を落とし、浅く手を広げる構えは、中国武術・少林寺拳法のものだ。
修業の一環として編み出された拳法でありながら、実用的かつ戦闘的なそれは、航空艦が当然のように飛び交う現在に至るまで、有効な格闘戦術として活躍している。
屈強な恭二郎が、雅のような線の細い少女に対して取ってよい構えではない。
だが、それでも彼は、躊躇せずに強い視線を雅に向ける。
同じ《都市級》である以上、格上ということはない。
しかし。
実力的に劣ることは、否めないのだ。
「折角、遠路遥々やって来たのだ。手合わせ程度、願えるな?」
言葉こそ下手だが、そこにあるのは、見下されたことへの憤りだ。
非常に好戦的で知られる比叡山高校だが、その筆頭もまた、ここまで血に飢えているとは。
雅は小さくため息をつくと、鋭い視線を恭二郎に向けた。
「――……良いです。受けるですよ」
「おい雅。そんな予定なかっただろ」
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