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「まぁ、大会まではまだまだ時間もあるんだし、ゆっくり考えようよ」
すると、茜もまた、諦めたようにため息をつく。口の周りはクリームでべとべとだ。
「そうしよっかぁ……。今は先送りにしちゃおうむぐぐっ……」
「ほらほら、いい加減パフェくらい1人で食べられるようになんなよ……」
「相変わらず仲が良いですね」
ふと掛けられた声に、茜と莉緒菜は同時に振り返る。
茜は莉緒菜に口元を拭かれた姿勢のまま、声の主の名前を呼んだ。
「ふぁいちふん!」
名を呼ばれた (?) のは男で、莉緒菜と同年代に見えた。
こちらもまた、茜と同じく、東京都庁での会議に出席していた青年。
私立青森山田高校、戦争部代表。
森川大地だ。
また、彼は1人ではなかった。彼の後ろに控えるようにして、女子生徒が静かに佇んでいたのだ。
「葉由さんも挨拶しましょう?」
大地が後ろを振り返って挨拶を促すが、彼女は不機嫌な表情で、ツンっと首を振った。
「敵だもん。挨拶なんかしたくない」
金髪のポニーテールを軽やかに揺らす彼女は、その強気な瞳を茜や莉緒菜に全く向けようとしない。
感じられるのは、単純な敵愾心だ。
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