頬を抓って痛いからって現実とは限らない

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「俺は一里塚 夏詰。 一応れっきとした日本人。 できればもう少し警戒を解くか殺気を抑えるかしてくれ、 聞きたいことがあるだけなんだ」 男は尚も訝しげな視線を俺に送るだけで、 何も応えはしなかった。 だからって、 待っても来ないかもしれない返事を待ってやる気なんて、 サラサラない。 「とりあえず、俺はここ、が ……っ!?」 聞きたかったことを聞く直前に、 唐突に、 怖い位突然、 俺を凄まじい寒気が襲った。 妙に冷静な頭が、あたりを見回して、 チラホラと溶けきってない雪が小さく山をつくっていることに気づく。 「(あー、そうかそういや、まだ3月、だっけ?)」 でも今年は、地球温暖化のせいで雪解けが早かったんじゃあ… ズキンッ! 「っ!!」 今度は激しい頭痛が俺を襲った。 「(痛い!割れる!)」 更に追い打ちをかけるようにして、 次第に過呼吸になる。 「はっ、………っ」 息が苦しい。 肺が押しつぶされそう。 男は俺の様子が変わったのに気づいたようで、 困惑した表情で見ていた。 「っ俺は…!」 尚も話をしようとしたが、その試みも叶わず。 遂に視界は霞み、 そのまま俺の意識は、 闇へと落ちた―――…  
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