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俺は思わず目を剥いた。
本当に、いきなり、突然。
目の前のそいつは頭を抱えて苦しみ出した。
酷く、頭が痛そうに。
「はっ、………っ」
まるで狂ったように苦しみ続ける目の前の人物。
過呼吸に陥っているのが、端から見ても分かる。
「っ、おい…」
どうすればいいのか分からず、とりあえず声をかけようと言葉を口から出しかけた。
しかし、その声はすぐに止まる。
今思えば、その声は届いていなかったんじゃないだろうか。
苦しそうなそいつが、苦しそうな顔で、
狂気にも似た、必死な色を孕んだ瞳で、
俺を、見ていた。
圧倒、された。
殺気にも似た何かを感じて、背中に寒気が走った。
恐怖。
それにも近いものを感じたのは、久しぶりだった。
「っ俺は…!」
まるで死に際のような掠れた声を発して、
その続きを言うより早く、
そいつは、
雪の上に倒れた―――…
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