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まるで雪に紛れるような、白く透き通った肌。
錆にも似た、赤茶色の色味が強い艶やかな髪。
毛先にいくほど黒みが増すようで、
生え際と毛先でかなり色が違う。
『―――殺さなくていい』
頭の奥で、意識の底で、
誰かがそう呟いた気がした。
伸ばされていた右手は、
いつの間にか柄から離れていた。
殺す気?
まさか。
まだこいつの正体を訝しむ自分はいたが、
俺はそれに抗った。
殺さなくていい。
殺さなくて、いいんだ。
俺は目の前の(おそらく)女を抱き上げ、
ゆっくりと立つ。
思ったよりも軽く、
意外なまでに骨が細かった。
正直女ということが半信半疑だった俺は、
少しの間ポカンと目を見開いた。
ほ、ホントに女だった……
だからと言って、
さっきまでの()の中の言葉がヒドいとかいうツッコミは受け付けない。
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