思い込みって何気にスゴかったりする

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「つか、いつんなったら起きんだこの野郎…」 未だに瞳を閉ざしたままのそいつを、 恨めしそうにチラ見しながら呟いた。 いやホント早いとこ目ぇ覚まさねえかな。 こちとら問い詰めにゃならんことがガッツリあるんだぞコラ。 そこんとこ分かってんのかコラ。 そんなことを心の中で漏らしたところで、 こいつに聞こえるわけがないことくらい分かってるさ… そうとも、聞きたいことが多々あるからだ。 同情したから連れてきたわけじゃない。 なんでそんな格好なのか、 異国から来た人間なのか、 聞かなければ。 ……まあ別に、 もっと本格的な所でもっと本格的に、 容赦なく尋問してやってもいいんだが。 それには1日かかるしな…。 そうだ、決して、 決して情が移っただとか、 なんか知らんけどほっとけなかっただとか。 そういう、 そういうのではない。 決してない。 決して、うん。 ぶつぶつと自分に言い聞かせるように言い訳してから、 もう日が暮れる直前だということに気づいた。 再度自分の横で眠るそいつを見る。 まだ起きる気配は……ないな。 「(風呂でも沸かしてこよう…)」 今日は冷え込みそうだ。 どうにも最近冷え症のひどい俺は、 体を縮こませるように猫背になりながら、 風呂を沸かすため部屋を後にした。  
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