とりあえず誰か水を一杯くれないか

26/26
7075人が本棚に入れています
本棚に追加
/1104ページ
ああ、どうして。 なんで。 俺がここにいる必要なんて、 ないじゃないか。 俺がここにいる意味なんて、 ないじゃないか。 やっと、ようやく、 終わると。 ずっと求めていた、 終止符が打てると。 そう、思っていたのに。 なんで俺なんだ。 他にいるだろう。 いただろう。 俺よりもっと、生きる価値のある人が。 なんで。 俺に、生きろと言うのか。 こんな、俺に。 未来ではなく、過去を生きろと。 ―――ああ俺には、 あの人たちの命を背負うことすら、出来ないのか。 なんて、情けない。 帰っても、誰もいない。 何もない。 あるとしたらきっと、 炭と化した万物。 ……いや。 あるいはそれでも。 帰れば、 灰くらい集められるハズ。 なんとかして、 どうにかして、 戻ろう。 帰ろう。 弔うために。 夏詰も気づかないほど深く、 耳の、頭の、心の奥底で、 砂嵐のように嘲笑う声があった。 ―――受ケ入レタネ。 ―――探セ。 ―――ヤツヲ。アノ忌々シイ、遣イ者ヲ。 ―――探セ。 幸か不幸か、 物語は始まってしまったのだ。  
/1104ページ

最初のコメントを投稿しよう!