35人が本棚に入れています
本棚に追加
───道場───
「勝彦さん?」
「ん? あぁ、智恵美か」
道場にある裏口に、立っていたのは茶髪を背中まで伸ばしたロングヘアーをポニーテールにまとめ、ややタレ目でスタイルは細めな女性だった。
名前は神風智恵美[カミカゼ・チエミ]健翔の母だ。
さっきのやりとりを全部見ていた、智恵美の表情はやはり暗かった。
「あの子……健翔に真実を話すのですね」
「あぁ。明日になる前に伝えないと」
そう言った勝彦は智恵美を安心させるために優しく微笑んだ。
「健翔は、自分の運命を受け入れられるのでしょうか」
今にも泣き出しそうな顔をする智恵美の肩を優しく抱きしめ
「俺達の息子だからな」
再び、優しく微笑む勝彦を見て、少し気が晴れたようだった。
「あいつ、だってもう大人だから早く真実を言わねェと」
そう言う、勝彦はすこし楽しみでもあるようだった。
「家宝を継いでしまったら?」
「‥‥あいつを信じよう、俺達は信じるしかない」
「そうですねっ!」
あぁ。と一つ頷いてから、勝彦は遠くを見る目になった。
最初のコメントを投稿しよう!