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「し、信じるも何もそんなもんあるわけ…」
「じゃあ、これは何……?」
黒兎は、いろんな色の糸を指差す。その指にも糸が絡まっていた。三本の糸。……千切れそうなよれよれの緑の糸。きっちりと強く結ばれている黒い糸。そして、光るように真っ直ぐ延びている赤い糸。
「きっと幻だ……だって、んなもんがあるわけ」
「あるんだよ、これは本物」
ツンと黒兎が糸をつつくと微かに揺れた。色は赤い糸。
「これをね、切るの。糸は手では切れない。武器でも何でも。ただ、このハサミでは切れる」
黒兎は、大きなハサミを糸に近付けブチッと切った。
待って。小さい頃に聞いた話だと、赤い糸って愛とか恋とかの……。
「今、僕は顔も知らない誰かと誰かの縁を切った。切り離した。頼まれたから」
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