金がない

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「女って、自分が思ってるより結構美人なことに気付かないよな。男はその逆なのにさ」  レイドの言葉を否定しない。間違っていないと思うからだ。そんな俺を、人は自意識過剰な男と思うだろうか? いや、多分俺の顔を見ればそうは思わないだろうな。嫌な奴だとは思うかもしれないが。  そう言えるだけ、俺は自分を知っているし、この俺の容姿と能力は周囲にも高く評価されている。何度女に「貴方の隣を胸を張って歩く、自信と勇気がないわ。それに貴方は、私を輝かせてくれない」とふられたことか。  俺に言わせれば、俺の隣を歩くのに自信も勇気もいらないし、彼女達を輝かせる自信もある。  彼女達の意見から見れば、男は女を輝かせるための装飾品で、俺はさながら大き過ぎるダイヤモンドなんだろう。自分に不釣合いな高価な宝石を持てば、人々の失笑を喰らう。  まぁ、それはさすがに少し言いすぎかもしれないが、結局そういうことだ。そういう類の言葉を受け取った後、決まって彼女達が急に色褪せて見えた。「くだらないよ」と否定する価値さえないように思えた。所詮俺は、外見しか見られていないのだと落胆する。そして、彼女達に愛がないという事に気付くんだ。  とにかく俺は、モテはするが付き合ってくれる女性に恵まれないというわけだ。俺のことを宝石としてじゃなく好きだと言って、傍に居てくれた女は、たった一人だけだった。
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